誰に落ち武者の姿が見えているのか? ~ 『ステキな金縛り』を観る

僕は今まで金縛りにあったことがありません。
幽霊を見たこともありません。
ただし、裁判員候補者にはなったことがあります。
そんな僕がもし裁判員になって、法廷に幽霊の証人が召喚されても、見えるはずがないので、自信をもって評決することなんてできません!

ところが、『ステキな金縛り』の中では、落ち武者の幽霊・六兵衛さん(西田敏行)が、冤罪で起訴されている被告人にとって唯一の証人ということになっています。
つまり、六兵衛さんの証言だけが有罪無罪の判断材料になるという、被告人からしてみれば、まったくもって希望が持てない状況の中で裁判が進みます。
もしかしたら死刑になるかもしれない自分の運命を、幽霊に委ねられるなんて、考えただけでもゾッとします。
むしろ死んだほうがマシのような気もします。

そんな僕の思惑はともかく、裁判の行方は、落ち武者の幽霊が本当にそこにいるのか?という証明から、その証言は信用に値するのか?という争点へと移っていきます。
その頃には、新聞各社はこぞってこの裁判をトップ記事として報道し、みんなが落ち武者の六兵衛さんに注目します。
きっと、誰もが六兵衛さんの姿を一目見たい!と思っていることでしょう。
これはもう、世の中は「誰に落ち武者の姿が見えているのか?」という話題でもちきりのはずです。

その落ち武者の幽霊が見える人ですが、宝生エミ(深津絵里)の推理によると、以下の3つの条件があるそうです。

  • 最近仕事がうまくいっていない
  • 最近なんらかのかたちで死に直面した
  • シナモンが好き(食べたり飲んだりしている)

この条件を満たしている人はたくさんいそうな気がしますが、どうでしょう?
少なくとも僕はこの条件を満たしているので、六兵衛さんの姿がハッキリ見えてます。

最後に、相変わらず深津絵里のコメディエンヌっぷりが素晴らしい。
どれだけ歳をとってもキュートな深津絵里の一挙手一投足を、金縛りにあったかのように眺めているだけでも価値のある作品です。