すべてはリーのために ~ 『燃えよドラゴン』を観る

ブルース・リーの映画を語るとき、ブルース・リーのことのほかに何か語ることがあるのでしょうか。
本作『燃えよドラゴン』では、まずもって主人公の名前がそのまま「リー」となっています。
あたかも等身大のブルース・リーであるかのよう。
そんな映画は、おニャン子クラブの素の魅力がたっぷり詰まった『おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!』と、なぜマルコヴィッチなのか?という疑問に永遠に悩まされ続ける『マルコヴィッチの穴』くらいしか僕は知りません(いや、他にも知っているのに思い出せないだけかも?)。

ともかく、冒頭からブルース・リーの魅力が惜しげもなく披露された『燃えよドラゴン』。
ブルース・リーを語るときに外せない、数々の名シーンがギュウギュウ詰め込まれています。
例えば、こんな場面。

  • 後々の格闘シーンへの布石となる「Don’t think, Feel.(考えるな、感じろ)」というセリフ
  • 攻撃を繰り広げると同時に発されるリーの奇声
  • 細長い棒を巧みに操る棒術
  • 誰もが真似したくなるヌンチャク
  • 敵をやっつけた後にみせる顔芸のようなリー顔
  • 志村けんのコントを思い出す鏡の部屋での格闘シーン

『燃えよドラゴン』を必ずしも最初から観られなくても、どのシーンからどう観始めても、必ずや目を奪われることでしょう。
もっと言うと、リーが出ていないシーンでさえ、リーの存在が片時も忘れられません。
その存在感は、「リーが出ていない映画なんて映画じゃない!」と、突拍子もなく叫んでしまいそうなほど強烈です。

ストーリーに綻びがみられようが、キャラクターひとりひとりがどういう人たちなのかよく分からなかろうが、ドラゴンが燃えていればそれでいい。
すべてはリーのためにある、と呟くことで、あらゆることが解決してしまうのです。