面白ければそれでいい ~ 『続・激突!カージャック』を観る

  • 続・激突!/カージャック [DVD]
    監督:スティーヴン・スピルバーグ 出演:ゴールディ・ホーン / ウィリアム・アザートン / ベン・ジョンソン

映画のタイトルで、「続」とくれば、第一作があってその続編だろうと誰もが思うことでしょう。
『続・猿の惑星』とか、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』とか。
この『続・激突!カージャック』も、スピルバーグの長編第一作として有名な『激突!』の続編のようなタイトルです。

しかしながら、映画の内容はというと、『激突!』とはなんのつながりもありません。
例えば『続・夕陽のガンマン』のように、舞台設定や主演が同じということもありません。
これはおそらく、当時はまだスピルバーグ監督が無名に近かったということと、前作『激突!』の評判がよかったがために、興行的につけられた邦題なのではないでしょうか(間違っていたらごめんなさい)。
あたかも「とにかく面白いから騙されたと思って観てください」と言われているようです(実際に騙されるわけですが)。

そんな思惑が見え隠れするこの邦題が象徴するように、「映画として面白ければそれでいい」という意思が徹底されています。

まず、実話に基づいているということですが、そこから何か教訓めいたことを伝えようとしているわけでは一切ありません。
実話から、映画的な面白みを抽出して仕上げられています。
実話も映画の脚本も、悲しい結末を迎えますが、にもかかわらず、観る者はその結末から何ら学びうるところがありません。

全編を通して、やたら目につくのは、ルー・ジーンの激しい癇癪っぷりです。
人生を左右する大事な場面になると、きまって度を越して癇癪をおこし、最悪の道を選んでしまいます。
たしかにルー・ジーンの傍若無人っぷりは冒頭から描かれているとはいえ、あまりに唐突に激しくわめきちらすその姿を前に、我々は茫然とせざるを得ません。
これはまさしく、映画を面白く前進させるためのトリガーにほかならないと解釈するしかない有様です。

このほかにも、何十台ものパトカーを引き連れて進むシーンや、中古車販売店での銃撃戦など、映画的に面白い要素がぎっしり詰め込まれています。
まずもって、「面白ければそれでいい」、「これがアメリカ映画だ!」と言わんばかりです。
そしてなにより、これが傑作なのです。

とはいえ、面白ければそれでいい、といっても、これが1974年の映画だということを忘れてはいけません。
『踊る大捜査線』シリーズのように、「ドラマとして面白ければそれでいい!」というのとは、まったく意味が違うのです。